糸目筒釜
風炉に火が入る
釜が煮え音をたてる
初風炉の茶
新緑のみどりをつれた風
明るい光
水指は備前種壺
茶器は中棗
そして茶碗は白い楽
茶杓は早苗田
初風炉のさわやかなお茶
風車釜
寒天に月煌々と光り
雪に影は玲瓏
千山は白雪に輝き
平野山村みな是れ雪
突如として吹く暁の風
雪は飛んで舞い
心路静かに清涼
寒梅は風にほころび
風車は音たてて動く

百陀釜
瞬間、訪れる心の影
寂
朝明の微風は静中の動
刻々と光彩は強くなり
輝きにかわる
草の露が光る、ダイヤモンド
朝茶の寂心境
朝の影に佛心を知る

鉄瓶瓢形
雨が降る
雨水は大地に落ち、大地にしみる
やがて地下から湧き出る水は
川と流れて、人の生命を養う飲み水
大地は植物を育て、みのりは
人の生きるための食べ物
人は生きるために食べ
大地は黙って水を湛え
植物を育てる
輪廻
今日も雨が降る
「なごみ」98年9月号に掲載

燗鍋
鉄の肌が光っている
釜の行列
形はさまざま、展覧会場
カン付はその釜の個性
釜が、自分の存在を主張して
光っている、並んでいる
その中に
カン鍋が、小さいながら
堂々と自分をおし出して
負けていない、負けていない

六角釜 「月山」
一本の緑の木は
万緑の山、青い森の象徴
カン付のふくろうが
ほう ほうと鳴く
月山
山頂の白い残雪に月が光る
人は何処から来て何処へ
旅をするのか
月山の山の緑も
ふくろうの声も
一椀の茶も
旅人がみちすがら出合う
いのちのたのしみである

風鈴釜
遍路のふる鈴の音が
風に走り、風を呼び
へんろ路を流れる
遍路のふる鈴は
清らかな心を呼びさます音
遍路は鈴と共に同行二人
道を迷うことなく歩く
遍路の鈴を写した釜は
茶室に音たてて鳴り
人の心の清浄をよびさます
「なごみ」97年3月号に掲載

紅花釜
真赤にとけた鉄の湯が
緋の色に輝いて
土の釜形にそそがれる
とび散る火玉
湯は形にそって自在に流れこみ
形にそって定まり
やがて冷えて固まる
土の形がこわされると
ゆるぎない鉄の釜が生れ
空間にどっしりと安座する
「なごみ」94年10月号に掲載

糸目尾垂釜
去年庭に放した鈴虫が
小さな卵を残していたのであろう
あの鈴虫の子が
土にかえって、土に生きた
今、宵闇の草のかげで
ないている ないている
いきていたんだ いのちなんだ
輪廻の強さだ 自然の強さだ
あの鈴虫の子が鳴いている
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